女子少年院に行ってきました。大人の社会見学リポートです。


目 次

ここに集まってくるのは超不良少女、再犯率は?

この度、見学させていただいたのは、交野女子学院。近畿2府4県と中部地方6県の家庭裁判所から保護処分として送致された未成年女子に矯正教育を授ける法務省所管の施設です。

高いビルが全くないのどかな大阪の郊外、田園風景や住宅が点在し、工場や企業の建物が並ぶ一角に学院の門があります。その先一本道を60メートルほど奥に進むとアーチ型の玄関が特徴的な白い一階建ての建物が見えてきす。
まるで、どこかの公民館か礼拝堂のような趣です。防壁感のあるイメージの建物を想像していたのでその印象は、意外でした。

年一回の見学会、今回は、約40名参加。ロッカーに貴重品を預け携帯、写真、録音機持ち込み禁止で、収容女子の姿も見えないように配慮されていました。
因みに親子の面会は、テレビで見るようなガラス越しではなく、ごく普通のソファのある面会室で行われるそうです。
女子少年院

見学会は院長先生によるスライドでのお話 → 院内見学 → 質疑応答という流れです。
男子の少年院は、様々な犯罪があるためその種類や罪の重さによって収容される場所も異なるのですが、女子の犯罪は少ないので、ここには、犯罪の種類もその重さの度合いも多様な子が一同に集まってくることになります。
とはいえ、ここに収容されるまでの過程は、何段階か経てからなので、入院しているのは、かなりの非行女子といえます。
まず、少年院の位置付けは、現在、どのようになっているのでしょうか。
統括する法務省からの組織図をとてもシンプルに端折った図を作ってみました。保護事件の流れが以下になります。

少年院に入るまでの流れ、組織図

単に犯罪事件を起こしたから即少年院入りではなく、まず、殆どが家庭裁判所にかけられます。そして審判を経て振り分け判断された一部の女子が少年院入りすることが理解できます。審判は、未成年のため非公開です。
例えば、実際に少年鑑別所84人収容されていたうちの24人が少年院送りというように。少年鑑別所では、心理テストを含め様々な角度から判断がなされます。
近年、19歳の警察官が発砲して上司を殺害する事件がありました。未成年であっても大人の裁判として扱うべきものだと判断された場合、家庭裁判所から検察庁に戻され、一般事件として扱われます。

さて、少年院の職員はどういう立場の人たちなのでしょうか。
国家公務員二種試験を合格した法務省専門職員で、矯正心理専門職法務教官保護観察官の方々です。その他、院内には、内科医、歯科医、常駐の精神科医がいらっしゃいます。
組織として院長の下に次長、その配下に庶務課、医務課、主席専門官が配されています。

質疑応答の時間に、「こちらの指導の成果をどのように示されるのか?再犯率が少なくなることが、ひとつの指標となるのでしょうか?」との問いがありましたが、人間相手であり、何かの利益を上げるものではないので、頑張りが評価される基準もなく、ただベストを尽くしていますといった応答をされていました。
確かに再犯の有無といっても長いひとりの人生のスパンで見ていかなければわかりません。
未成年においての再犯はこちらで11件あり、大人になってからの再犯については、追跡調査は、具体的にないようでした。つまり少年院にいた履歴はつくものの再犯時に過去履歴をカウントした統計は出されていないようでした。(これら情報について誤りがあればご指摘くだされば幸いに存じます)
エピソード、事例のサンプルでもあれば知りたい気持ちでしたが、やはり個人情報、特に未成年者であることから、迂闊に情報を出すことは、タブーであり、慎重に線を引いておられる印象を受けました。

少年院の教育課程は?深刻な課題は、大人も子供も帰住先があるかどうか

大きく目的別にすると一つは矯正教育、二つ目は社会復帰支援(就労支援)です。
まずは、院生は、本人の精神発達あるいは障害状態によって4段階に分けられています。

第一種
心身に障害がない状態 12歳から23歳まで
第二種
心身に障害がない状態 16歳から23歳まで
第三種
心身に著しい障害がある 12歳から26歳まで
サカキバラ事件の当事者がこのレベルにあたります。医療処置が必要です。
第四種
少年法において刑の執行を受ける者

交野女子学院では、収容定員は91名ですが、現時点で、14歳(中2)から20歳未満まで約48名を収容されています。それに対し職員は、51名です。こちらの院も他の少年院も年々その人数は減少しているため統廃合が進んでいます。
犯罪の種類は、窃盗が最も多く、次に障害事件ぐ犯覚せい剤と続きます。
11か月で卒院させることになっていますが、早い者は、半年でも卒院、日課に従わないなどがあるとそれだけ延長されなかなか帰せず、24歳まで過ごさせることもあるといいます。
退院させるには、複数の職員が、様々な角度から評価します。

教育課程は、生活指導、職業指導、大学に進学するための教科指導があります。
また、高卒認定試験、介護福祉や情報処理、フォークリフト資格も取得できます。
卒業の時期には、出身中学校から校長先生が来られ卒業認定授与も行われます。

広い中庭には、母子像モニュメントがあり、美しい花がところどころに咲いています。
写真に収められないのが本当に残念なほど、美術館の中庭のようで美しかったです。
これらの庭園の花は、帰る先があり、逃亡することのない農業科の女子が育てています。

国の予算はどれだけ投入されているの?

中庭を囲んで受付のある棟と同じ白い一階建ての棟が、建っています。
フェンスは低く、忍び返しがあるのみです。プールや体育管も併設されていて、特に女子はバレーボールをさせることが多いようです。これには理由があって、男子の少年院の場合もそうですが、サッカーなど交じり合うようなスポーツはすぐ喧嘩になるからだそうです。
通常、棟を繋ぐ渡り廊下には、屋根があるものですが、敢えて無しにして傘を差して渡れるようにしてあります。これだけで解放感が違います。傘を差すことは凶器にもなるわけですが、それを許すのは、出来るだけ普段の生活環境に近いものにしたいという方針が反映されているのです。

これら施設の建物は昭和56年代に建てられたもので修繕をしながら大切に使用されてきました。
院での給食は、3食500円で賄われていますが、厳しい予算なので院内の農園で野菜を栽培しておかずの足しにしているそうです。
スライド写真で拝見したのは、朝食の一例としてパンにおかず一品、野菜ジュースが付く昭和時代の給食メニューのようなものでした。それでも女子の場合は、拒食症の問題を抱えている子が少なくないのが特徴です。

さて実際の彼女達の部屋はどうなっているのでしょうか。現状そのものを見ることはできませんでしたが、余っている部屋があるため見学用に開放されていました。
7帖ほどの縦長の4人部屋になります。壁に扇風機1台、1人分のスペースは、畳に木の枠と引き出しのあるベッド、扉のない洋服掛け、学校にあるのと同じ机と椅子が隙間なく配置されていました。非常に下手で雑なスケッチで恐縮ですが、以下が一人の所有分です。ベッド小さい机と椅子、ロッカー風の洋服掛け、この1セットが2人分両脇に配置されています。それはぴっちりと隙間の無いほどに。しかし、さほど質素な印象は受けませんでした。


因みに私が東京で寮生活を一時期していた時と同じ広さの4人部屋でした。そして当時、冷房が無く扇風機もないので団扇でした。違うのは2段ベッドだったというところくらいです。見学者の中には、「これよりずっとひどい環境に住んでいたことあるわ。」と言ってる方もいました。

服は、下着から上着まで、華美にならないよう支給されたものを着用します。
図書室以外、各自の部屋には冷暖房がありません。最近の夏は、熱中症で死者がでるほどの猛暑です。これに関して世論的には、人道的にどうかという考え方と、悪いことをしたんだからいい生活をさせる必要はないという2つの考え方があります。

一日の生活は時起床、教科指導、職業指導があり、時には洗濯、入浴、17時には夕食、21時には就寝というプログラムになっています。大人と違うのは、労働時間が無いことです。

年間少年院の子に掛かる国の税金は、一人につき300万だそうです。驚きました。

昨今の犯罪の傾向とこれからの課題と成人年齢引き上げ問題

統計上では、非行件数は減っています。これは子供の数が減っていることも影響しているかもしれませんが、特に顕著なのは、暴走族集団が少なくなったこと、そして暴走族の少年に対する早期介入です。殺人そのものも減っています。但し、一定数の凶悪、不可解事件が発生します。

報道される数や事件の現状と実際は違うことが少なくありません。
TVでコメンテーターが様々な見解を発言します。一つの殺人事件において、時に核家族化が進んだ影響だというコメントもよくされます。しかしながら、実際は、特に昭和はじめ、地方の田舎の大家族なりにもめごとがあり、親殺しもありました。メディアの未発達な頃に見過ごされてきただけなのだと私は思うのです。

最近の犯罪の傾向としては、犯罪の単独化、非行少年と普通少年のボーダレス化、問題行動の多様化、個別化、非行の実態が見えない、コミュニケーション能力の危機等が挙げられるそうです。
非行の実態が見えないのは、IT化が進み、ラインなどで詐欺をする等、組織化した犯罪も多く、元締めの下で犯罪に手を染めるからと考えられます。

大人の場合、万引きや犯罪行為そのものの罪やその行為自体の大きさが問題になります。
しかし未成年の場合、犯罪は小さくても家庭的環境、社会的環境を見て、少年院に入れるなり、児童保護施設に入れるなりの選択を段階的にしていきます。

これについて、質疑応答で、「ぐ犯等、罪は大きくなくても少年院に入れてしまうと前科のようなものが付くのに環境が悪いから入れてしまっていいのか?」との問いがありましたが、やはり、そういう子は、シンナーを吸う等のそれ相応の微罪があるとのことです。

2018年に衆議院審議入りした民法改正法案による成人年齢引き上げ問題(成人を18にする)があります。これに弁護士会は反対していますし、院としても反対であると仰っていて個々に判断すべきと言われています。メリットもあるが、デメリットが多いということでもあるでしょう。
被害者の立場として例えば、19歳の子に子供を強姦されたなら、こちら側は、ひどいことをされて被害者でもあるにも関わらずネット上で名前をさらされたりするかもしれないし、地元では人づてにわかってしまう。しかし、犯罪者は、19歳の子供なので新聞、ネットの公式メディアには名前も顔も晒されない。勿論、ネットでは瞬時に広がるかもしれないが、被害者情報とともに。いつまでも未成年者扱いするなということになります。これは、成人年齢引き下げはその抑止力になるという社会的メリットと被害者側の心情を考えたメリットがあります。
しかし、この場合も主に社会的デメリットのひとつは、18,19の子の微罪による再犯が防げない(大人扱いとなれば、矯正教育が出来ない)ことにあります。

さて、出所してからの問題は、帰る当てがないという場合は深刻です。児童保護施設に送られる場合があります。この時も年齢が18で成人扱いであれば、保護施設の対象から外されるわけなので、どこが受け皿になるのでしょうか。

「出所してから刑務所でのパワハラが問題になった事件がありました。パワハラ防止はどうされていますか?」との問いには、
少年苦情の申し出は視察委員会が、カギのポストを置いていて意見を述べることが出来ます。しかし、何もしていないのに、悪知恵を働かせて院を出てから無いことをある事に言う子もいるため男性職員と対峙させる場合は、必ずドアを開けるか誰か付きそうようにしていますとのことでした。

未成年も大人の刑務所もやはり出所してからの社会の壁を乗り越えるのが大変な人が多いのは想像に難くありません。
出所したもののキツイ仕事をしながら白い目で見られるより、刑務所で、ご飯付き、仕事付きの生活の方がマシと再犯により入り直す人も結構いるとききます。

幼児時代からの親の暴力、精神疾患、生まれながらに持つ殺人快楽、いじめ、貧困等、犯罪を作ってしまうものは何なのか?
未成年のいじめからの自殺は、不特定多数の殺人であり、犯罪者が特定されていないだけで、こっちの方がこの少年院に入っている子より罪が大きいのでは?
被害者の立場から、加害者の立場から想像しながら臨んだ見学でしたが、想像できるのは、所詮、感情や心情ぐらいで、その実体を知るのは非常に難しいものだと感じましたが、本人の努力と社会復帰後の受け入れが、どちらかでも欠ければ、再犯を増やすことに繋がることが心に強く刻まれました。

文:宮崎純代

法務省の再犯防止対策の経緯
http://www.moj.go.jp/content/001248268.pdf

法務省の国民に協力してほしい再犯防止のためのイメージ図です。
http://www.moj.go.jp/content/001129894.pdf

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